御挨拶

御挨拶

唐津市ふるさと会館アルピノ 運営開始に寄せて

 唐津市の皆さん、また市外の皆様も初めまして。本年度より唐津市ふるさと会館アルピノ(以降アルピノ)を運営させていただきます。株式会社Asile 石川と申します。弊社は公の入札を経て、今年度より正式に5年の間アルピノの管理運営を任せていただくこととなりました。去る昨年11月、指定管理者の指名を頂戴して以降、できる限り地域の皆様とお会いしてご挨拶をし、また協議を重ねてまいりました。そんな中、皆様異口同音頂戴しました、「東京の会社がなぜ唐津の、しかもアルピノを?」というご質問にここで一旦のお答えを申し上げたく思います。

 弊社は事業年度で6年目を迎える、比較的若い会社で、社員は皆20代です。Webサイトをご覧頂けばおわかりかと思いますが、現在では機器の製造、ソフトウェアの開発、EC等の運営など、皆様のイメージで言う「ITベンチャー」らしい事業を行っています。ところが、創業時はというとITから遠く、「伝統工芸や地方産品を世界に広める」をテーマに活動しておりました。このご挨拶を書くにあたり、当初の事業計画や資料を見直していると、当時の泣き笑いを思い出し、懐かしさがこみ上げてます。
右も左もわからぬ若輩がいかに稚拙な企画をしていたかという気恥ずかしさもございますが、一つをご紹介しますと「酒月」という企画があります。

 当時のパンフレット

当時のパンフレット

 弊社は唐津とも縁の深い早稲田大学の授業中に生まれた会社です。
そこで講師としておいでになったさるベンチャーキャピタル(投資家)の方とお話しして、
「伝統工芸」や「地方産品」という重厚なテーマに取り組んでおりました。

若輩ゆえに工芸の素養もなく、産品についても詳しくなかったわたくし達には、ただただ大きな世界が広がっているばかりに思えたものです。
そんな日々の中で、親類縁者の多く住む、という理由で佐賀の産品を見て回っていた時に、「酒の会」というものに出会いました。
今では定着している日本酒ブームですが、当時は「酒の会」が都会でちらほらと始まったところで、唐津でも虹の松原ホテルさんが企画運営をされていたくらいだったように記憶しています。
たまたま参加した唐津の酒の会で、唐津産の食材をつまみに唐津焼のぐい飲みで唐津産のお酒を飲む という唐津づくしの素敵な時間を過ごすことができたのです。何より、そこには唐津という「場」によって醸成された、ひと繋がりのストーリーが存在しました。

幼少期から祖母を始め親類が住んでいることから佐賀、ないし唐津には子供の頃から毎年訪れ、大抵の名物は味わっていました。
東京にはない魅力という意味で、毎年楽しみにはしていたのですが、唐津や、佐賀の一つ一つの食べ物や器を殊更に意識したことはありませんでした。
大人になって初めてわかる といったところでしょうか。
酒・器・食材、食卓に必要な要素がすべてそろった、宝石箱のような唐津の魅力に気づくのには、ある程度の年齢が必要なのかもしれません。
また、後の調査などで地元の方々にとっては当たり前すぎて意識されないことのようだ、ということもわかってきましたので、これといった産品のない東京で育ったからこその感動だとも思っています。

それでは、ということで考えた事業が「酒月」(サカヅキ)でした。
東京の日本庭園をお借りして、また飲食店産の協力を得て東京で酒の会を企画したりいたしました。

 

遠く東京まで足を運んでいただきました酒造の皆様、虹の松原ホテルの従業員の皆様にこの場を借りて感謝を申し上げます。
また、何もわからぬ少年に親切にご指導、作品や事業のご紹介をいただいた窯元の皆様や商店の皆様にも、お礼申し上げたく思います。
これも唐津、そしてご協力いただいた皆様の力なのですが、酒の会やサービスは高い評判を得ました。
今でもお客様には「またやってよ」だとか、「次はいつやるの」だとかいったお声をいただくくらいです。ご厚情にもかかわらず当時の私どもの力では及ばず、事業として継続、発展させていくことはできませんでした。

それというのも酒・肴・器の「組み合わせ」こそがメインであった「酒月」においては商品点数がキモになるわけですが、在庫を増やし、取引先を増やすの、、特にお酒の販売にそれなりの資本と体力が要りました。
また、酒の会を定期開催する「場」も持ち得ませんでした。応援してくださった皆様には非常に心苦しかったのですが、とてもではないけれど経営判断として継続はできなかったわけです。
当時、酒・肴・器、そしてレストランまでがすべてそろったアルピノという「場」を垂涎の思いで見つめていたのを思い出します。

 長くなりましたが、そのような経緯で一度は停止していたものの、アルピノが弊社原点の事業にとても近いこと、お分りいただけたのではないかと思います。

 唐津市ふるさと会館条例は下記のとおり、その設置目的の提言から始まっています。

第1条 本市及び東松浦地域における特産物及び伝統工芸産業の振興並びに地域住民の文化活動等の利用による交流の場の提供を図り、もって地域経済の活性化及び地域文化の向上に資するため、唐津市ふるさと会館(以下「会館」という。)を設置する。

「特産物、伝統工芸の進行、そして交流の場」とまとめることができるでしょうか。まさに創業時の我々にとって得難かった機能こそが、アルピノの本懐というわけです。

また条文からもう一点、アルピノというのは「場」であり、「資する」ものだということです。
「インターネットで商売」と聞くと、それ自身が何らかの役割を担うように思われるのですが、例えばネットオークションなどをご覧になるとおわかりの通り、インターネットにしろ、アルピノという箱にしろ、利用者の皆様自体がコンテンツであり、内容そのものなのです。アルピノ同様、IT技術というのは至極インフラ的なもので、「場」を提供するものだということをご念頭に置いていただきたく思います。弊社一丸となって皆様に、ハードにせよITにせよ、より良いご活躍の「場」を作ること。そのために開けていること。あくまで裏方。これが弊社アルピノ運営に向けての絶対的な指針です。

上記より、至らない点も多々あるかと思いますが、ご意見真摯に受け止め、またご依頼ご要望、ご提案を叶えるべく真剣に励んでまいりますのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

唐津の玄関口、アルピノの運営という得難い機会を与えてくださった、また創業時の私たちに貴重な学びの機会を与えてくださった唐津に、感謝と愛を込めて。


2016年4月某日

株式会社Asile
代表取締役 石川世位也